
フクバカ ~働く男の昼休み~vol.7

はじめに
シゴトバカタログ編集部の“服をバカほど愛する男”「M」と申します。
(服のサイズはXLですが…)
『フクバカ ~働く男の昼休み~』では、妻の手作り弁当でランチ代を浮かせながら、魂が反応する一着を求めて、街の服屋さんを巡る服バカ営業マンの気ままな昼休みのひとときを、ゆるっと楽しみながら、ちょっぴり真面目に綴っていきます。
デニムの歴史が語りかけるもの
今日は高田本町での打ち合わせを終え、高田公園の駐車場でランチタイム。
今日の弁当は、ドカンと“大きなハンバーグ”がのったロコモコ丼。
昨夜の晩ご飯に作った手作りハンバーグに、目玉焼きをのせて仕上げてくれていた。
猛暑の続くこの時期、食中毒予防で黄身までしっかり火を通してくれるあたりも、さすが抜かりなし。半熟好きな私としてはちょっと惜しい気もするけれど、こういう気遣いがありがたい。
妻が早起きして作った弁当を10分で飲み込む。
ありがとう、うまかった。
午後イチのアポまでの移動時間を差し引いて――私に与えられた“自由時間”は残り40分。
そろそろ冬のアウターを探さねばと、腹ごしらえを済ませたあとは近くの おたちゅう上越店でディグタイムだ。
対応してくれたのは副店長の木嶋さん。
古着の査定に定評があり、いつもこちらが納得できる価格を提示してくれる。
「いまこのアイテムは市場でこのくらいで動いてますよ」と、市場相場まで教えてくれるから、余計に信頼できるのだ。
実は木嶋さん、筋金入りのフクバカ仲間。
いつも顔を合わせると、最近のお互いの購入アイテムや気になるブランドの話題でつい盛り上がり、お互いの近況報告から話題がどんどん広がっていく。
最近は特にアメカジアイテムの買取に力を入れているそうで、店内の一角にはデニムやワークジャケットがずらり。思わず「これはディグらずにいられない」と足が止まる。
ショーケースやラックには無骨でタフな定番から、遊び心のある一点物まで所狭しと並んでいる。
一歩足を踏み入れると、時間を忘れて服と向き合ってしまう危険な空間だ。
90s ボブ・マーリーのロンT
グッドプリント! 首回りのヤレ感がたまらない。
Tシャツはよく見かけても、ロンTはなかなか出会えない。
レゲエのリズムが聞こえてくるような一枚。
Carhartt ダックジャケット
冬の新潟に心強い味方。古くはないが、グッドコンディション。特にこのダック地、真冬の強い風をしっかりブロックしてくれる頼もしさがある。寒さと闘う男の背中を、確かに守ってくれる相棒になってくれそうだ。
stussy ナイロンジャケット
背中のニット切り替えが効いた一枚。
中綿入りだから、冬もガシガシ着られる安心感がある。
ストリートの軽快さと防寒性を両立する、その絶妙なバランス感覚はさすがのstussy。
ただのナイロンジャケットではなく、“冬を遊ぶためのギア”として仕上げられているところに心が躍る。
Tiffany & Co. ブレスレット
「これ狙いでガチャを回す人、多いですよ」と木嶋さんが笑う。
一流ブランドをガチャで引き当てる――そのギャップに思わずニヤリ。
財布の中身ではなく、運とタイミングが試される。
こういう“小ネタ”があるから、ディグはやめられない。
そして、今日もっとも魂を刺激された一品は──
50s JC PENNY FOREMOST 1st Type DENIM JACKET
JC PENNY FOREMOST 1st Type のデニムジャケット
小ぶりでイカついフロントポケット。
ボタンに刻まれた70年分の時間。
色落ちとリペア痕の一つひとつが、前オーナーの愛着を物語っている。
こういう1着を手に取ると、ただの古着ではなく「時間を纏う服」だと実感する。
小さなボディに凝縮された迫力、そして錆びたボタンが放つ存在感。
まさに“本日の主役”。魂を刺激された一着だった。
……しかし、残念ながらサイズは一般的なSかXS。
私(XL体型)には夢のまた夢。
袖を通すことは叶わないが、ただそこにあるだけで心が揺さぶられる。
服好きにとっては、それもまた嬉しい出会い方だ。
お腹が満たされた後のお宝ディグは、自分にとっての至福のルーティーン。
やっぱり古着との出会いは“人”で決まる部分が大きい。
木嶋さんのように趣味の合う人と話し込みながら選ぶことで、その服に新しい物語が生まれるように思う。
あっという間の40分。時間厳守が私の流儀だ。
魂を刺激する一着との出会いが、午後の仕事に向き合う私の原動力にもなる。
またこの街のどこかで。
どんな服と、どんな刺激に出会えるのか。
楽しみは、まだ尽きそうにない。