フクバカ ~働く男の昼休み~vol.9
はじめに
シゴトバカタログ編集部の“服をバカほど愛する男”「M」と申します。
(服のサイズはXLですが…)
『フクバカ ~働く男の昼休み~』では、妻の手作り弁当でランチ代を浮かせながら、魂が反応する一着を求めて、街の服屋さんを巡る服バカ営業マンの気ままな昼休みのひとときを、ゆるっと楽しみながら、ちょっぴり真面目に綴っていきます。
羊に導かれ、モコモコの誘惑へ――その行方は!?
今日は12時きっかり、直江津港近くの駐車場でランチタイムだ。
今日のお弁当はラム肉入りの野菜炒め。
肉はやわらかく、野菜はシャキッと歯ごたえが残っている。
どうやら昨夜のジンギスカンの材料を、焼かずに弁当用にとっておき、朝炒めてくれたようだ。
冷蔵庫に残ってたあの“ラム肉”がそうか。
マトンは夕食に、柔らかいラムは弁当用に。計算しているところは流石だ。
肉を食べながらふと思う。
ラムって羊だよな。
羊……モコモコ……そうだ、フリース!
そういえば、 TATRAS(タトラス)の今期のフリースが近々入荷するって、滝沢さん言ってたな…
というわけで本日“アウター探しの旅・第三章”が急遽決定。
妻が早起きして作った弁当を10分で飲み込む。
ありがとう、うまかった。
午後の予定まで――私に与えられた“自由時間”は残り40分。
向かう先はもちろん—— chemical combination(ケミカルコンビネーション)だ!
店内に足を踏み入れると、すぐにオーナーの 滝沢さんが声をかけてくれる。
「お、来たね!タトラス?」
カウンター前の一番目立つラックに神々しい例のロゴが目に入る。
レディースライン(ゴールド)からメンズライン(シルバー)までなんと今期モデルが勢ぞろい。
「ファー」と「ボア」の2つの素材に、「立ち襟タイプ」と「フーディタイプ」。
カラーはブラックとベージュの2色展開。
――つまり、よりどりみどりの誘惑ラックである。
これだけ揃えるってさすが滝沢さん。
どれも手に取りたくなるモデルばかりで、お小遣い制サラリーマンの理性が、完全に試されるラインナップだ…
「おいおいおい、 俺の財布。この誘惑に耐えられるのかい?耐えられないのかい?どっちなんだい!」
「耐えられ…」――その後のフレーズがルーレットのように交互に頭を駆け巡る。
“る!”と“ない!”が行きつ戻りつ――心の中は、葛藤の戦場と化す。
そして、何度も財布を開くも、お金が増えることはなく、
心の中で「あの歌のビスケットみたいに増えてくれ」と必死に唱えてみるが――そんなこと、叶うはずもない…
見る角度によって表情が変わる、洗練された美しいデザイン、
高級感がありながらも日常で気兼ねなく羽織れる安心感……ああ、全部ほしい。
しかし、ここは冷静になろう!
頭を冷やすように誘惑ラックから目をそらしてみる。
飛び込んでくるのは、これからのシーズンに活躍しそうな旬のアイテムたち。
【MASSES/マシス】スウェード ジャケット
シンプルなデザインながら、馬革のスウェードが上品さを演出。個人的にはワンサイズアップで、厚手のニットを差し込んで着たいところ。
【marka】MA-1
中綿は軽く、保温性、撥水性に優れた「プリマロフト」が採用されており、真冬でもインナーはロンT1枚でもいけそうな頼れるヤツだ。
【N.HOOLYWOOD× Wrangler】 シャツジャケット&ランチャーパンツ
フェードの利いた厚手のブラックコーデュロイの絶妙な色味がヴィンテージ感を際立たせている。一見ウエスタンシャツのようだが、両サイドにポケット付きでアウターとしても活躍必至。これはセットアップで着てこそ真価を発揮する、通好みのアイテムだ。
【Maison MIHARA YASUHIRO×BEDWIN】ラバーソールシューズ
ドラマ「私立探偵 濱マイク」の“マイク”(永瀬正敏氏)を彷彿とさせる、ホワイト&ブラックのラバソ。私も当時、これに憧れたひとり。懐かしさから、どこからともなくこのドラマの主題歌「くちばしにチェリー」が聞こえてくるような気がする。
そして、今日もっとも魂を刺激された一品は── やっぱりコレ!
TATRAS BOMOS - Faux Fur Hooded Jacket(BLACK)
【タトラス エコファー フードブルゾン】
シンプルなデザインながら、ただ者じゃない存在感。
美しい艶の極上のエコファーは、まるでラビットファーのように柔らかく、ずっと撫でていたくなる質感だ。
しかも、フロントは“ダブルジップ”仕様。
下を少し開ければ――そう、ぽっこりお腹も“自然な立体感”に早変わり。
これぞ機能性とファッション性の完璧な融合。(※個人的見解)
さらに、立体的でボリュームのあるフードが抜群に良い!
40代も後半になり、フーディに少し抵抗感を抱く近頃だが、いやらしい若作り感はまったくなし。
むしろ“大人の余裕”すら漂う。
鏡の前で思わず 「悪くないじゃん」 とつぶやいてしまった。
まさに魂を鷲掴みにされた“本日の主役”だ。
高品質で上品なシルバーのダブルジップ
ボリューム感のあるフード
よし、こいつに決めた!
――でも、ボーナスが出てからね(汗)
叩いても増えない我が財布のリアルは、今日も厳しい!
「また来ます!」と滝沢さんに告げる。
「よろしく~!」と、滝沢さんはいつもと変わらぬ笑顔で見送ってくれた。
“見るだけ常連”の私にも、変わらぬ優しさ。
本当は「次こそ買います」と言いたいのに、言えないまま笑って手を振る。
――でも、12月、この“ふかふか”を迎えに!今度はきっと着て帰れるはず…(たぶん)。
外に出ると、冷たい秋の雨風が肌を撫でる。
あの神々しい誘惑ラックの攻撃を受けても――財布はノーダメージ!
葛藤の戦場から、なんとか無事に帰還できた。
そして、なんだか心は、ふかふかで温かい。
あのファーの触り心地とぬくもりを思い出しながら、ボーナス後にふかふかになる財布の中身を想像する――ああ、この夢見心地、悪くない。
あっという間の40分。時間厳守が私の流儀だ。
魂を刺激する一着との出会いが、午後の仕事に向き合う私の原動力にもなる。
またこの街のどこかで どんな服と、どんな刺激に出会えるのか。
楽しみは、まだ尽きそうにない。
