フクバカ ~働く男の昼休み~vol.10
はじめに
シゴトバカタログ編集部の“服をバカほど愛する男”「M」と申します。
(服のサイズはXLですが…)
『フクバカ ~働く男の昼休み~』では、妻の手作り弁当でランチ代を浮かせながら、魂が反応する一着を求めて、街の服屋さんを巡る服バカ営業マンの気ままな昼休みのひとときを、ゆるっと楽しみながら、ちょっぴり真面目に綴っていきます。
フクバカ流 クリスマス大作戦
──迫る時間にラビリンス──
富岡での午前の打ち合わせを終え、車内でランチタイムだ。
今日は、照り焼きチキンとサラダだけの、いつもよりちょっとシンプルなお弁当。
チキンをかじりながら、ふと思う。 ──街のいたるところにイルミネーションが少しずつ増えてきた。 気づけば、クリスマスがもう目の前だ。
毎日こうして弁当を作ってくれる妻に、「今年は、ちゃんとプレゼントでも探すか…」
ふとそんな気持ちになった。
実はここ最近、服を買うペースがちょっと早い。新しい服たちが、干してある洗濯物の中で主張しはじめているのだ。
「また買ったの?」と妻に“チクリ”と言われるあの瞬間が、まあまあ刺さる。
あの瞬間の気まずさといったらない。だからこそ、たまには妻のために何か選んでみるのも悪くない。
いや、むしろプレゼントのひとつも贈っておけば、物干し場でチクッとくる痛みも、少しはやわらぐかも……。
そんな都合のいい望みを抱えつつ、妻が早起きして作ってくれた弁当を10分で飲み込む。
午後の予定まで――私に与えられた“自由時間”は残り40分。
よし、今日は「 CRYSTAL MOON(クリスタルムーン)」だ。
PATIO 1階の CRYSTAL MOON(クリスタルムーン)。
店の前で立ち止まり、少し挙動不審になっていると、スタッフの田村さんが声をかけてくれた。
今日の田村さんは、大人っぽさの中に上品さが漂うワンピース姿。
「そのワンピース、可愛いですね」と思わず口にすると、
「MOUSSY の新作ですよ」と、にこっと返してくれた。
レディースファッションのトレンドに関しては、私はほぼ無知。
だが田村さんは、10代の頃からファッションが大好きで、 クリスタルムーンに通っているうちに、このお店のファンからスタッフになったという筋金入り。
この人に聞けば、間違いない。
そんな確信だけが、静かに胸に落ちていった。
まずは、田村さんが着ていたワンピースを見せてもらう。
なるほど、上品で大人っぽい。
動くたびに軽やかに揺れる感じ。シルエットも上品だ。
だからこそ、これはこれで身につけるのはかなり勇気がいるだろうな…
──控えめな妻にはちょっと無理そうだ。
気を取り直して、店内を見て回ることにする。
可愛らしいアイテムから、落ち着いた上品なアイテムまで、幅広く揃っている。
ふと目をやると、お店の一角にはメンズアイテムも並んでいる。
メンズもあるのか…
いかんいかん、今日の目的はプレゼントだ。
それでも、つい、いつもの癖で目がいってしまう。
ふわっとしたモヘア風のカーディガンや、ドライバーズニットに目移りして、つい手に取りそうになる。
もう、とことん"フクバカ"──自分のこと中心の困った性分だ。
強引に視線をそらして、プレゼント選びに戻る。
せっかくだから、妻の毎日がちょっとだけ楽しくなるようなアイテムを見つけたい。
【MOUSSY】ニット
【RESEXXY】ダウンコート
好きそうな色味は…
落ち着いたトーンが好きそうだけど、たまには明るめも新鮮かもしれない。
【SLY】フェイクレザー ロングブーツ
【RODEO CROWNS】マフラー
でも、実用性も大事だし……。
結局どんなものが嬉しいのか、考えれば考えるほど迷宮入りしていく。
「喜んでくれたらいいな」という思いと、「外したらどうしよう」という不安が、頭の中で同時発生している状態だ。
とはいえ、悩んでばかりもいられない。私の時間は限られている!
悩んだあげく選んだのは── コレ!
恥ずかしいので中身はナイショです (〃´∪`〃)ゞ
たぶん誰も興味はないとは思いますが、これまでご紹介した写真のどこかにひっそり写っています。
気が向いたら、予想してみてください(笑)
ご想像にお任せします!ということで、ご勘弁を。
しかしながら、オジサン一人で女性のアイテムを選ぶというのはなかなか心細いものだ。
本当に正解なのかどうか、いまだに自信はない。
そんな私に、田村さんは嫌な顔ひとつせず付き合ってくれて、そのうえラッピングまで丁寧に。
本当にありがたい。
おかげで、なんとかミッションをクリアできた。
プレゼントを手にして店を出ると、目の前にイルミネーションがきらりと輝いていた。
冷たい風が頬を突くけれど、気分も足取りも、なぜかちょっと軽い。
──少しだけ、良いことした気分。
あっという間の40分。時間厳守が私の流儀だ。
魂を刺激する一着との出会いが、午後の仕事に向き合う私の原動力にもなる。
またこの街のどこかで どんな服と、どんな刺激に出会えるのか。
楽しみは、まだ尽きそうにない。
