
フクバカ ~働く男の昼休み~vol.5

はじめに
シゴトバカタログbyあどば編集部の服バカこと「M」と申します。
(服のサイズはXLですが…)
『フクバカ ~働く男の昼休み~』では、妻の手作り弁当でランチ代を浮かせながら、魂が反応する一着を求めて、街の服屋さんを巡る服バカ営業マンの気ままな昼休みのひとときを、ゆるっと楽しみながら、ちょっぴり真面目に綴っていきます。
夏シャツは、“伝説ショップ”で掘り起こす。
午前の打ち合わせを終え、今日は高田公園の駐車場でランチタイム。
本日のランチは、大きなおにぎりがふたつ。
「えっ、これだけ……?」と一瞬怯むが、ひと口かじってすぐに納得。
中から現れたのは、ゴロッとでかい唐揚げ。
「唐揚げ爆弾か!」シンプルに見せておいて、ちゃんと満足感を仕込んでくる。
そんな妻の優しさを5分で飲み込む。ありがとう、うまかった。
午後イチのアポまでの移動時間を差し引いて――私に与えられた“自由時間”は残り40分。
さて、6月も後半。そろそろ梅雨が明ける。
そうなると、XL体型の私にとっては試練の季節「夏」がやってくるわけだが、
その一方で、夏らしい開放感のある派手な服が着られるというワクワクする季節でもある。
ここ数年、夏が近づくと自然と思い出すのが──WACKO MARIA(ワコマリア)。
大胆なグラフィック、なのに上品。さらに、レーヨンやリヨセルのとろけるような肌触りが、一度着たら最後、このシャツの虜になってしまう。
今年もそんな夏の相棒を求めて、本町の名店「RELAX revolution」へ。
お店の前に立つだけで、あの頃の記憶が呼び起こされる。
1990年代、裏原宿ストリートファッション全盛期──ここRELAXは
全国のファッションフリークが注目するブランドを数多く揃え、県内にとどまらず、全国的にも名の知れた伝説的ショップ。
私も、そんなカルチャーにどっぷり浸かったうちの一人だ。
この店を訪れるたび、当時の空気感が一気にフラッシュバックしてくる。
あの時、あのアイテムに出会った場所。記憶の中のハンガーがゆらりと揺れる。
出迎えてくれたのは、オーナーの齋藤さん。
私がこの店に初めて足を運んだのは、もう30年も前のこと。
齋藤さんの変わらぬ感度の高いセレクトと濃密なラインナップ。
それがあるから、今もふらっと立ち寄りたくなるのだ。
店内に一歩踏み入れれば、そこは服好きにとっての楽園。──いや、まさに“天国上越”。
新作から旧作までが混在し、シャツ、Tシャツ、ショーツ、キャップ、ハットが整然と並ぶ光景はまさに圧巻だ。
『この品揃え、公式オンライン超えてない…?』
と本気でつぶやいてしまった。――そんな品揃えの中で、次に目を引いたのが…
WACKO MARIAと並び、RELAXの看板を背負うもうひとつの雄──「CHALLENGER(チャレンジャー)」
バイク乗りの魂に直結するような格好よさ。エンジン音が似合うTシャツばかりだ。
WACKO MARIAを目当てで来たけれど、こういう偶然の“出会い”があるのも、リアル店舗ならではの醍醐味だと思う。
そして、今日もっとも魂を刺激された一品は──
ヴィンテージライクなオンブレチェック柄のレーヨンシャツ。
ブラウン、水色、ベージュの絶妙なバランス、そして「Rayon 100%」のとろける着心地。
おじさんには、これくらいの落ち着き具合がバツグンに刺さる。
無理に若ぶらず、まさに“大人の余裕”って感じだ。
WACKO MARIA OMBRE CHECK SHIRT 24S/S TYPE 2
「良いシャツ見つけたね」と齋藤さんのお墨付きもいただき、ニヤけが止まらない。
この方の“ひと言”は、昔から私にとって絶大な安心感があり不思議と背中を押されてしまう。
齋藤さんは、服の話になるといつもすこぶる楽しそうだ。
といっても、グイグイくる感じではなく、“ちょっと踏み込んだマニアックな情報”を、さらっと差し出してくれる感じ。
ああ、やっぱりこの人、流石だなと、いつも思う。
……とはいえ、
思わず「これください」と言いたくなる衝動を、ぐっとこらえる。
なにせ私は“おこづかい制”という名の枷をはめられた身。
さっき唐揚げ爆弾で満たされたお腹とはウラハラに、財布はカラカラの軽さ。
見れば見るほど沼る──そんな服の魅力に足をとられ、物欲の熱がじわじわと上がっていく。
しかしそんな熱を冷ますかのように、ふと外を見れば、梅雨空らしい重たい曇り空が「頭を冷やせ!」と言わんばかりに、今にもバケツ水を上から浴びせてきそうだ。
──午後のアポまで、あと10分。
曇り空と迫る時間が、物欲全開のフクバカにそっとブレーキをかけてくれた。
今日は見るだけ。
そう決めていたけど、物欲はきっちり刺激されまくってタイムアップ!
今月の給料日の、その向こうにうっすら光が見えた……ような気がした。
でもまあ、たぶん妄想。
『給料日よ。早く来い!』
そう呟いて、今日も華麗な身のこなしでレジ前を通り過ぎる。
あっという間の40分。時間厳守が私の流儀だ。
魂を刺激する一着との出会いが、午後の仕事に向き合う私の原動力にもなる。
またこの街のどこかで。
どんな服と、どんな刺激に出会えるのか。
楽しみは、まだ尽きそうにない。