
フクバカ ~働く男の昼休み~vol.3【夜の部/番外編】

はじめに
シゴトバカタログbyあどば編集部の服バカこと「M」と申します。
(服のサイズはXLですが…)
『フクバカ ~働く男の昼休み~』では、妻の手作り弁当でランチ代を浮かせながら、魂が反応する一着を求めて、街の服屋さんを巡ってきましたが――今回はちょっと番外編。
いつもは昼の40分が“ディグタイム”の私ですが、実は数日前からずっとそわそわ。
理由はひとつ。
とある古着屋のInstagram投稿が……ヤバいんです。
仕事終わり、定時ダッシュで古着パトロール
今日は会社でランチタイム。
いつもの車内よりも、広々とした自分のデスクで食べられるのは、ちょっとリラックスできて嬉しい。
妻が作ってくれた弁当のメインは、大きな手作り唐揚げが2つ。
昨夜から鶏もも肉を醤油だれに漬け込んでいたのを、私は知っている。
ありがとう、うまかった。
いつもなら10分でたいらげてしまう弁当も、少しだけ時間をかけて――15分で完食
残りの45分。
ここ数日、気になってしかたがないのが「エトセトラ.トーキョー」のInstagramの投稿だ。

とにかく、気になるアイテムが続々と上がってくる。これは……
13:00オープンという営業時間ゆえ、昼休みでは行けない。
ということで――私は静かに決意していた。
18:00。
秒針が「ピタリ」と定時を指すやいなや、
「お先でーす!」と自然体を装いながら、タイムカードを華麗にスライドイン。
服バカの“夜の部”がスタート。向かう先は、もちろん「エトセトラ.トーキョー」だ。
今日の目的は、あくまで“パトロール”
というのも、今は――給料日前。「買わない」ではなく「買えない」という懐事情。
だから今日は、冷静な目で店内をチェックして、来月のターゲットでも見つけられれば……くらいのつもりだ。
上越本町。暗くなり始めた街に、ひときわ目立つ「古美着悦」のネオン。
店のドアを開けると――
出迎えてくれたのは、オーナーの新井さん。
東京・世田谷、石川・金沢、そしてここ新潟・上越。
3つの街を股にかけ、海外にも積極的に足を運び、現地のバイヤーから“その街に合うアイテム”をピンポイントで選び抜く――まさに古着ディレクターだ。
スタイリストとしての顔も持ち、著名人のコーディネートも数多く手がける。
そんな多忙な新井さんに会うのは、実に1年ぶりだ。
若くしてこの道を走り続ける彼の話は、いつも面白いし、学びが多い。
そして何より、肩の力が抜けた自然体な雰囲気を持ちながら、知識・センス・情報すべてが最前線にあり、服の話になると止まらない。
とにかく、「服が好き!」という人柄がダイレクトに伝わってくる、そんな人だ。
店内を見渡すと、さすがエトセトラ。セレクトの一つひとつが刺さる。
まず目に飛び込んできたのは、エルメスのリネンブルゾン。
薄手で涼しげなのに、どこか重厚感のある佇まい。
さすがの存在感に、心が一瞬ザワつく。
アートなプリントが施された Betty BoopのTシャツ。90sくらいか!?
カラーリングが絶妙で、着る人の個性まで引き出してくれそうだ。
Nine Inch NailsのヴィンテージのバンドTも発見!
市場価値もグッと上がってきているアイテムだが、このプリントはかなり珍しい。「All Sport」のボディでUSA製だ。
無地から柄物まで豊富に並ぶ半袖シャツのラック。
夏の気配とともに、軽やかなシャツたちがどれも主張してくる。
暖色系の「温かみ」から、寒色系の「涼やかさ」まで、その日の気分や気候に寄り添う、“センスが光る色味”のアイテムが揃っている。
そして極めつけは、Instagramでも気になっていた「MARNI」のブルゾン。
フロントZIPは、センターからわずかに右にずれたライダースジャケット風のデザインで、定番の形にひとひねり加えた、印象的なディテールだ。
…が、サイズが小さい。
XL体型にはどう考えても厳しい。くぅぅ……。
今日は退勤後。
昼休みのように、時計の針に追われないぶん、財布のひもがゆるみそうになる。
いくつか、完全にロックオンしてしまったアイテムがある。
「給料日前」という防衛線があることが、今はただただありがたい。
それでも――
久しぶりに新井さんと再会できたのが、今日は何よりの刺激だった。
服バカ同士、話は尽きない。そんなひと時が、良い気分転換になって――
明日へのモチベーションにもなる。
またこの街のどこかで。
どんな服と、どんな刺激に出会えるのか。
楽しみは、まだ尽きそうにない。