御菓子司 相川(通称:相川菓子店)
四季折々の生菓子から羊羹まで 街に和菓子店のある豊かさを守りたい
2023.09.14. 公開
「最中といえば相川」と謳われて
仲町1丁目にある創業180年の小さな和菓子店です。「最中といえば相川」と言われてきました。名入最中は2009年に市民の方のご要望に応え「瞽女最中」と改名し、いまでも新しいお客様を呼んでくれる看板商品です。
添加物の使用を抑え、北海道小豆を使った自家製の餡・シンプルな原材料で、基本の和菓子こそ美味しくをモットーに、懐かしい味わいの和菓子を手作りしています。
「うちのきんつばが食べたい」
店主の相川郁子と申します。私が実家の和菓子店で働くようになったのは49歳のときです。その2年前、夫を喪くしとてもショックで、とりあえず、自分が役に立てることがあればそれをやり遂げるまでは生きていよう、と考えました。
それで、ちょうど、店の人手がなくなって困っていた母を手伝うことにしたのです。その母の他界により、2021年、56歳で7代目となりました。
ですから、当初は継ぐかどうかまでは考えていませんでした。
でも、若いお客さんに「このお店、絶対になくさないでください」とか、代々のお得意さんに「継いでがんばってください」などと言われたり。こんなに多くの方が愛してくれるお菓子を簡単に無くしてはいけないな、と思うようになりました。
自分自身、うちのきんつばを一生食べつづけたい。自分が継がなかったら、食べられなくなる!と思ったのです。それが店を継いだ真の理由かもしれません。
世の中にはおいしいもの、新しいスイーツがあふれています。こんな小さな和菓子店にわざわざ買いに来てくださることを本当にありがたいと思っています。
感謝の気持ちを忘れずに、ご近所の方々、地域の皆さんの役に立つよう、親しみやすい和菓子店としてできるだけ長く続けていきたいと思っています。
50歳からのスタートで考えたこと
まさに50の手習いで始めたものですから、基礎もなければ応用もないので、新しい商品を作る力はない。
まずは、うちの和菓子をきちんと作れるようになろう。そして、先代たちが残してくれたお菓子をもっと大勢の方に知ってもらうこと。それと、子どもの頃食べたお菓子の復活。
つまりは、いまある店の財産を大事にすることが、まず自分のすべきことだと考えました。
自分たちの代で終わりだと思っていた両親は、古いままのやり方を通してきたので、包装や宣伝など、いろいろな面で改善や工夫できることがたくさんあったのです。
「うちの餡、うちの甘味」にこだわる
餡は、皮の柔らかい北海道産の小豆を使った自家製餡です。「甘さ控えめだね」とか「上品な甘さだね」と言われることが多いのですが、「甘すぎる」と言われることもあります。
つくづく、味覚は十人十色だと思います。
うちにはうちの餡の甘さがあり、お客様はこれが口に合うという方です。だから伝統の味を守ることは大事。ただ、昔ほどの甘さが好まれなくなっているのは事実です。
伝統の餡を守りながらも、現代風の味わいにしていく。店が続いていくためにはそれも必要だと考えています。
変わらないお菓子、新しいお菓子
品揃えは、最中、羊羹、きんつば、どらやきなど和菓子の定番。定番だけど他店ではあまり扱っていない茶通(ちゃつう)や鶴の子(つるのこ)など。他店にはない紫蘇巻き(しそまき)などのオリジナル商品。四季折々の桜餅やうぐいす餅など生菓子。
これらはまさに半世紀以上変わらず店頭に並ぶ、世代をつないでくれるお菓子といえます。
住宅地の中にある店舗ですので、ご近所の御用達として役に立ちたいと思っています。どんなお菓子が身近にあれば喜ばれるだろう。そんな思いで、この夏(2023年)、「アイス最中」「冷凍フルーツ大福」を始めました。酷暑の夏が続き、冷たいものが近所で買えれば便利だろうな、という思いからです。
和菓子になじみのない若い世代にもこの世界を知ってもらいたいと思い、一昨年は、羊羹と錦玉(寒天ゼリー)を使った「越の風花羹(こしのかざばなかん)」というお菓子を創作しました。
高田という町の季節感、ストーリーを込め、羊羹や錦玉といった定番の材料を新しい形でまとめたものです。その年のイベント用に求められて作ったのですが、いつかは定番にしたいと考えています。
仕事の現場
店の裏に小さな工場があります。ここですべてのお菓子を作り、包装しています。製造用機械といえば餡練機、オーブンだけ。漉し餡から黄身餡、月餅餡など、9種類の餡を練ります。
朝7時ころから準備をはじめます。
朝生(あさなま)と呼ばれる、きんつばや季節の生菓子から作り始め、定番品の補充などをしていきます。意外と手のかかるのが個包装。お菓子を一つひとつ小さな包材に入れて、シーラーにかけて密封し、ラベルを貼ります。
9時の開店後からは、売れ行きを見て追加製造をしていきます。朝の時間帯はパートさんが包装や製造補助として頑張ってくれています。
一段落してお昼休憩。午後1時、2時ころになることも多いです。
午後は、翌日の注文品の製造や、定番品の仕込み。夕方に餡練り。道具、設備の洗浄も大事な作業。これが意外と時間がかかります。
以上がおおよそのパターンです。繁忙期や注文によっては、早出・残業、夜中までかかることもあります。
深くて広い和菓子の世界
和菓子は、日本の自然、文化、歴史と深く関わり地域性もある、とても奥行きのある世界です。そんなことを商品を通して表現し、ご案内できるのも、和菓子店ならではのやりがいです。
いま、形の美しさ、かわいらしさ、素材の新しい提供の仕方などで、全国の和菓子店が努力し工夫して新しい世界を切り拓いています。センスを生かしていろいろな挑戦ができる世界でもあります。
先代が宝を残してくれたように、私も7代目として後世に残る商品を一つでも作ることができたら。いつかかなえたい大きな夢です。
自分好みのお店に出会う
味覚はほんとうに人それぞれ、十人十色。自分好みの餡、お店に出会っていただきたい。町に個店がたくさんあればそれができるし、和菓子文化の継承に大事なことだと思います。専門店がたくさんある町は、とても豊かな町だと思うのです。
最後に
おいしいお菓子を食べると、心が癒やされ、からだがくつろぎます。幸せを感じます。そして何より、平和であってこそ。戦争によってお菓子を食べられなかったり、作れなかったりした歴史を忘れず、人をつなぎ、世代をつなぎ、ひいては世界をつなぐ平和のシンボルとして作り続けていきたいと思います。
シゴトバ情報
御菓子司 相川(通称:相川菓子店)
四季折々の生菓子から羊羹まで 街に和菓子店のある豊かさを守りたい
- 所在地
〒943-0831 新潟県上越市仲町1-4-7
- 電話番号
- 025-524-4450
- FAX
- 025-524-4450
- 代表者
- 代表 相川 郁子
- 業種
- 製造業(飲食料品)、小売業(飲食料品)
- 事業内容
- 和菓子の製造小売
- 創業・法人設立年
- 江戸末期
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